
ホイールリムとタイヤの内面に筒状のチューブのないチューブレスタイヤは、タイヤのビードがリムに密着して気密性を確保しています。しかし経年変化によるビードの硬化、ビードと接するリムの状態によっては、内部の空気が徐々に漏れてしまうこともあります。そんな時に重宝するのがビードシーラーです。
ビードとリムが密着することで空気圧が保たれるチューブレスタイヤ

トレッド面に異物がなくパンクしているわけでもないのに、タイヤの空気圧が徐々に低下する場合、リムとビードの密着不良の疑いがある。密着性の良否を確認するには石けん水をスプレーする。

カニの泡のようにブクブクと気泡が出てきたら、そこから空気が漏れている証拠だ。空気漏れのペースが遅い場合は泡の発生を目視できない場合もあるので、一度で判断せず何度か確認をくりかえしてみよう。それでも分からない場合は、チェックだけに拘泥せずタイヤを外してビードシーラーを塗布しても良いだろう。
キャストホイールだけでなく、スポークホイールでも装着されることがあるチューブレスタイヤは、筒状のチューブに空気を溜めることなく、リムの内面とタイヤの内面で空気室を作っているのが特徴です。
チューブタイヤの場合、路上で踏んだ釘や異物がトレッドを貫通してチューブに穴を開けると、チューブから漏れた空気はチューブとタイヤ内面の隙間に放出されるため、タイヤは一気に潰れてしまいます。これはタイヤとチューブが二層構造になっているためです。
それに対してチューブタイヤは、釘などがトレッドを貫通してもタイヤ一層で空気圧を保っているため、異物自体が「栓」のような役目を果たすため、異物が刺さっている間は内部の空気が抜けないこともあります。
またチューブタイヤをパンク修理する際は、チューブを引き出してチューブ自体にパッチを貼って穴を塞がなくてはなりませんが、チューブレスタイヤはトレッドの表面から補修材を挿入するだけで、ホイールからタイヤを外すことなくパンク修理が可能です。
異物の大きさや穴の開き方によっては、チューブレスタイヤでも一気に空気が抜けてしまうこともありますが、傾向としてはチューブレスタイヤはチューブタイヤよりアクシデントに対して強いといえます。
冒頭でキャストホイールだけでなくスポークホイールでもチューブレスタイヤの採用例が増えていると触れましたが、チューブレス化にとってはリムの内面に穴がないことが必須条件となります。したがってニップル穴がリムの内面に貫通しているスポークホイールはチューブが必要です。
接触部分のコンディションによって空気が漏れる可能性がある

DIYでタイヤ交換を行う際に、タイヤレバーでビードやリムを傷つけるトラブルも少なくない。経年変化でビードの柔軟性が低下することも多いが、画像のようにレバーを差し込む180°反対側のビードをリム中央に落とし込むことも重要。こうすることでタイヤレバーを挿入した側に余裕ができ、ビードやリムを傷めづらくなる。

過去にビードシーラーを塗ったことがあるのか古いタイヤのビードが付着したのか、リム内面にはゴムがこびり付いていた。柔軟性のあるゴムならともかく、プラスチックのように硬化しているので空気漏れの原因となっているのかも知れない。

ワイヤーブラシで擦ると消しゴムくずのようにポロポロと剥がれ落ちる。ビードシーラーを使うか否かにかかわらず、タイヤ交換時にはリム内側の汚れを取り除くのが鉄則。タイヤレバーによる傷があれば、サンドペーパーやヤスリで表面をならしておく。
チェーブレスタイヤにおいて、チューブが風船のように膨らまなくても空気圧を維持できるのは、タイヤのビードとリムが密着して気密性を確保できるからです。
裏を返せば、リムとビードが密着していなければ空気が漏れる可能性があるわけです。トレッド面に釘やガラス片が刺さっていないのに、時間経過と共に徐々にチューブレスタイヤの空気圧が低下してしまう場合、リムとビードの接触状態に問題があることが考えられます。
原因としては「ビードの硬化」「ビードの破損」「リムの経年劣化」「リムの破損」などがあります。
タイヤのゴムは新品時には柔軟性がありますが、時間経過と共に硬化します。硬化したタイヤはグリップが低下するため本来は交換すべきですが、走行距離が少なく溝も残っていることを理由に使い続けることで、リムと接触するビードの柔軟性やシール性が低下して空気が漏れることがあります。
自分でタイヤを組み替える際に、タイヤレバーでビードを傷つけたことで空気漏れが発生することもあります。これはビードの硬化との関連もありますが、タイヤが新しいうちは少々の傷もゴムの柔軟性でシールされますが、硬化してシール性が低下することで傷ついた部分から漏れが発生する可能性が上昇します。
リムの経年劣化については、旧車や絶版車ではリム内面の塗装や表面処理や素材自体が劣化して表面に凹凸が生じ、ビードとの接触部分に隙間ができて空気漏れの原因になり得ます。
リムの破損はビードの破損と同様、DIYでタイヤ交換を行う際などにタイヤレバーを食い込ませて付けてしまった傷から空気が漏れるパターンです。
乾燥後も粘りのあるビードシーラー

パンク修理材メーカーなどから発売されているビードシーラー。チューブレスタイヤのホイールやタイヤに塗るもので思いつくのは組み付け時のタイヤワックスぐらいだが、さまざまなコンディションのホイールを取り扱うタイヤのプロにとってはビードシーラーもポピュラーなアイテムだ。
経年変化やアクシデント、トラブルなどによって低下、悪化したビードやリムの密着性改善に効果が期待できるのが「ビードシーラー」です。ビードシーラーは液状のゴムのような成分で、接着剤と違って張り付いてしまうわけではなく、空気圧を加えて剥がれることもありません。
ビードやリムに塗布してしばらく放置することで(15分ほど)柔軟性のあるゴム皮膜となり、この状態でタイヤを組み付けることで接触部分のシール性が回復します。
ビードシーラーはタイヤショップの常備ケミカルのひとつで、タイヤ交換時にリム内面が荒れているホイールには予防的に塗布することも多いようです。
硬化したビードや傷ついたリムのシール性向上に効果がある

缶の蓋に付いているハケで皮膜が均等になるようビードに塗布する。コテコテに塗り重ねる必要はない。

張り付いたゴム汚れを落として脱脂したリム側にもビードシーラーを塗布する。塗装ホイールで塗膜が割れていたり、腐食がクレーター状に進行している部分には多めに塗布しておく。15分ほどで乾燥した後も表面はペタペタとしており、いかにもシール性が高そうな手触りだ。

ビードシーラーを塗っても、スムーズに組み付けできるようにタイヤワックスを塗るのは問題ない。
ここで紹介している作業例では、タイヤの硬化とリム内面に張り付いたゴムスラッジによって生じる空気漏れに対してビードシーラーを塗布しました。
リムに顕著な傷がなくゴム汚れだけならワイヤーブラシなどでクリーニングするだけでシーラーを塗布する必要性はそれほど高くないとも考えられますが、ゴム皮膜を作っておくことでビードとの密着性や空気の保持性がいっそう高くなることが期待できます。
作業例ではタイヤを新品に交換しましたが、交換せず再使用する場合はビード側にも塗布しておくとなお良いでしょう。タイヤレバーなどでビードを傷つけてしまった時は、必ず塗布してから空気を入れるようにします。
リムからタイヤを外さなくてもパンク修理できるのがチューブレスタイヤの大きな利点なのに、ビードシーラーを塗るためにタイヤを着脱するのは面倒な作業となります。しかしパンクもしていないのに徐々にに空気が抜け、リムとタイヤの境界部分にスプレーした石けん水がブクブクと泡立つことを確認したら、意を決してタイヤを外し、リム内面を脱脂洗浄してからビードシーラーを塗布してみると悩みが解決するかもしれません。
- ポイント1・リム内面とビードの接触部分のシール性によって内圧が保たれているチューブレスタイヤ
- ポイント2・シール性の低下により空気漏れが発生する場合はビードシーラーをリムとビードに塗布することで改善が期待できる
https://news.webike.net/maintenance/73421/
https://news.webike.net/maintenance/232647/
https://news.webike.net/maintenance/33001/
https://news.webike.net/parts-gears/64270/
Source: Webike
パンクじゃないのにタイヤから空気が漏れる。そんな時に使いたいビードシーラー